◆CALL機能を活用しての授業

国際学部 青木 信之

 国際、情報科学、芸術の3学部の「英語講読」クラスに、語学センターLL第1教室を使用した。LL第1教室ではテープ、ビデオ教材が利用できる従来型のLL設備の上にコンピュータを教師卓及び学生ブースのすべてに装備し、更にそれらをネットワークで結んでいる。一般的な情報処理教室のネットワークと異なるところは、大量のデータを学生側に一斉に送れるように、「スクールトーク」と呼ばれるLL専用ネットワークを組み入れていることである。このスクールトークによるデータ転送速度は、約15秒で60ブースに2MBと言われている。
 さて、このLL第1教室には様々な機能があるが、私の授業では特にテープを流すこと、教材データをネットワーク転送すること、教師のコンピュータ画面を学生側に送出すること、ある特定の学生をモデルとして提示すること、学生のキーボードを教師卓からコントロールすることなどの機能を頻繁に使用した。使用したコンピュータソフトは、まずワープロとして『Solo Writer』、英英辞書として『Ameri-can Heritage Dictionary』、さらに英和・和英辞書として研究社の『新英和・和英中辞典』の電子ブック版をフリーウェアの『書見台』によって使用させた。その他、タイピングソフトとして『TypeSchool』 等も使った。
 リーディングと同じ受容技能であり、耳からのインプットという意味でリスニングを取り入れた授業を簡単に紹介する。最初に本文を2回から3回聞かせる。学生がテープを聞いている間に、あらかじめスキャナで取り込んでおいた本文のディクテーション問題をスクールトークを通じて学生ブースすべてに転送しておく。聞き終わった学生たちは、スクールトークにより転送されてきたファイル(「Flash Bit」と呼ぶ)を取り出し、ブース2台に1台ずつ設置されているプリンタにより印刷をする。ファイルの中に直接タイピングする学生は印刷の必要はない。そうして、再び本文テープを3回流し、学生はそれを聞きながら本文の穴の空いた箇所を聞き取って埋めていく作業を行う。3回聞き終わったところで教科書を開き、それぞれ答え合わせを行う。間違いなどを赤で訂正したディクテーション用紙には、下に学籍番号と氏名を書く欄が設けられているので、学生はそれに書き込み、教師に提出する。それが毎回出席票の代わりとなった。出欠管理ソフトがシステムの中に組み込まれているので、本当はこれを使用したかったが、ほぼ一年間様々な不備で稼働しなかった。後期の終了間際にようやくそれが動くようになったので、次年度には使用したいと考えている。
 次に本文の中で、分からない単語や表現をそれぞれ電子辞書を用いて調べる。英和・和英の場合は、あらかじめCDキャディにアダプタをつけてある研究社の『新英和・和英中辞典』の電子ブック版を使用する。それを検索するためのソフトとしてフリーウェアの『書見台』を各ブースにインストールしてあり、学生が簡単に呼び出すことができるように設定してある。学生はその『書見台』とともに、ワープロソフトである Solo Writer も同時に起動し、モニタ画面を2分割するような形で2つのソフトを開く。書見台で検索した単語の定義はコピー&ペーストできるので、調べた単語はすべてワープロにコピーさせることにしている。つまり、ワープロ画面は学生それぞれのいわゆる単語帳となるのである。調べ終わったファイルは、フロッピーに保存してもよいし、またプリントアウトしてファイリングするのも学生の自由である。
 学生が単語などを調べ終わった後、本文の内容を時折質問を交えながら解説していく。本文の解説後、その課の練習問題に移る。ディクテーションタイプの問題や内容把握の問題、また本文の表現を利用して英作文を行う問題がある。学生たちは再び英和・和英辞書を使いながら、それらの問題に取り組む。学生がワープロ上で英作文をしているところを教師卓から順次モニタすることが可能である。行き詰まっている学生に対しては、ヘッドセットをしている場合は音声で、していない場合にはキーボードコントロールで学生の画面上に、これから個人指導を行う旨を連絡する。他の学生の迷惑にならないようにヘッドセットを通じて説明をしながら、学生の画面にこちらからさまざまな表現を打ち出して指導する。多くの学生が共通につまづいている問題の場合は、学生全員を一斉コールし、教師のコンピュータ画面を送出し一斉指導を行う。あるいは吊り下げテレビかプロジェクタに教師画面を写し、学生はそれを見ながら自分のコンピュータ画面にそれぞれ打ち込んだり、訂正を行うこともできる。紙の上での英作文では短時間に全員の作文を、しかもリアルタイムで添削することなどは到底不可能であるが、これらのシステムを使用すれば比較的容易であり、しかもその学生のプライバシーさえ守ることが可能である。つまりどのような指導をされているかを他の学生に知られないで行うことができるのである。
 英文で書かれた情報をできるだけ早く掴むという主旨で、速読練習を主として行った『英語講読FC』でも、ほぼ上で述べたのと同じようなLL及びコンピュータ機能を使用した。
 速読教材自体は、ネットワークで配布する場合もあればあらかじめ印刷しておいて配布する場合もあった。同僚の岩井千秋先生はオーサリングソフトのハイパーカードを利用して、自動的に一分間に何語読めたかを計算してくれる速読ソフトを開発して利用していた。この速読の授業では英語をなるべく英語で理解するという意味で、電子版『American Heritage Dictionary』 英英辞典を利用した。この授業に際しても、学生は単語帳をそれぞれフロッピーに保存するかプリントアウトして作成することが求められた。
 以上、1年生だけの授業であり、しかも語学センターが設置されたばかりでもあったのですべてが暗中模索であった。しかし、教材転送や、キーボードコントロールを通じてのリアルタイムの作文個人添削など、これらのシステムの可能性を実感するには十分であった。また、これらの機器操作の習熟にかなりの時間を要すると当初は思ったが、自分が必要とする機能に限定するならば、つまり上で述べたような授業程度ならさほど練習を必要としなかったこともつけ加えておきたい。
 さらに今回は私が代表して英語授業での使用報告を書かせていただいたが、英語のほかにも中国語、フランス語でも何人かの先生方がLL教室を使用されている。英語以外の言語での語学センター教室の利用については次号のニューズレターでご報告できればと思っている。

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